伝統行事とは実に面白いと思います。
8月15日、いわき市平神谷作という地域に伝わる地域の祭りを見てきました。
その名も「てーまいこいこい」と言います。「てーまいこいこい 〇〇〇(自分の名前)でござっとー」と言いながら束ねた麦藁に火をつけたものを山の上から投げる伝統行事。常会長さんによれば、疫病よけ・火事よけ・盆送りの意味があるのではないかとのこと。以前は小学3年生~中学2年生の男子のみが山に登っていましたが、10年ほど前から少子化の影響で女の子も参加するようになったとのこと。昔は100把ほどを投げたそうで、子どものみで執り行なう子どもの行事だったそうです。
震災前は8/13~17の5日間やられていましたが、震災後の2年間は中止。去年から地区で話し合いをして、使用する麦藁も栽培を再開して、今年は15日の1日だけ開催する形で復活したそうです。そして地区の皆で盛り上げるために参加年齢の枠を外し、昔子どもだった人たちも投げられるようにしたとのことでした。
***
神谷作公民館のすぐそばにある山が舞台。
頂上には子どもたちが集まっていました。良い眺めです。海が見えます。
麦藁。これに火をつけます。
回して、投げます。
山の上には、小さな祠。
***
神谷作公民館では皆でバーベキューをしていて、食事の準備をしていたお母さん方にお話を伺うことができました。
「震災とはいえ2年あいちゃったのは良くなかったねぇ」
「細々とでもやっていかないとダメだね。一回やめちゃうと復活するにはその何十倍もの労力がかかる」
「前は子どもだけの行事だったんだけど、あんたらが子供の頃(つまり25年ほど前)くらいからかな、PTAが口出すようになって、子供会の行事になって、ちょっと前からは火事が危ないから消防署にも届けを出せって言われて、山の上には大人が付いて山の下には消防車が待機して。時代だね。」
「昔は松明を背負って登っていったんだけど今は懐中電灯だよ」
「麦藁の作り方も子どもから子どもに伝わっていってたんだけど、段々小さくなっていっちゃって、今年はちゃんとしたの教えようってことで大人が入ったのよ。で、11日の日に皆で作ったの」
「山の上から1回投げてちょっと休んでまた投げるんだけどね、うちの子どもたちは休憩のときに食べるカップラーメンが嬉しくてね、堂々と食べられるからね」
「伝統行事の残し方って時代時代で変わっていくんだね」
様々なお話が次から次へと。
***
神谷作は私の住んでいる下高久と同じ学区で、幼馴染が区の役員をしています。「てーまいこいこい」は小学校のときに同じクラスだったその幼馴染の作文で存在を初めて知って、名前の響きに惹かれていたことを覚えています。ちなみに近世期には下高久と神谷作は別の村だったので伝わる祭りは異なっています。
祭りの日の昼間に仕事で神谷作の方とお会いして、この行事がやられることを知りました。初めて見に来て山にも登って、部外者なのにもかかわらず投げさせてもらいました。(この場をお借りして篤さまに感謝!!)
伝統芸能と呼ばれるものはどこでも、継承の課題を常に抱えています。震災によってその課題が可視化され更なる継承の危機に曝されているものも想像以上にあります。
「てーまいこいこい」、素敵な伝統行事だと思います。ひいおじいちゃんもおじいちゃんもお父さんも子供の頃に山の上から燃えた麦藁を投げて、また今日は子どもが投げる。素敵な記憶の繋がりだと思います。
#
by tsumugi-tsumugu
| 2013-09-01 17:07
| 日々の出来事